コーレンワインを知ってますか?

突然で恐縮だが、ここで皆さんに質問。「コーレンワイン」というものをご存知だろうか?
これはオランダでそう呼ばれている酒で、オランダ語ではCoren Wijnと表記し、コーレンワインに近い音で発音する。何のことはない、ワインというからワインかと思うと、そうではなくこれは英国のジンのご先祖かご本家ともいうべき蒸留酒、すなわちオランダのスピリッツ「ジュネーバー」というオランダの焼酎のことなのだ(右の写真)。

原料はブドウではなく穀類で、ジュニパーベリー(左の写真)という木の実で香りづけされていて特有のアニス臭がする酒だ。英国でジンが作られるようになる17世紀ころまでは長い間当時のフランドル地域(現在のオランダ・ベルギー)から英国にたくさん輸出されていた。日本の鎌倉時代にあたる12世紀の英国を舞台にした推理小説のなかにもフランドルから輸入されたジュネーバーが飲まれている場面が出てきて、思わぬところでジュネーバーの歴史を知ることになった。

今でもジュネーバーのことをジンと呼ぶこともあり、ジュネーバーを置く酒屋ではジンと同じ棚に並べられていることが多い。ただ香りづけの仕方が異なり、英国では17世紀フランドルからのジュネーバーが入らなくなって(英蘭戦争の影響か?)独自に製造せざるを得なくなった時、アニス臭に替えて、松脂臭を付けた現在のドライ・ジンをつくるようになり、今やご本家よりもこの分家の方が英国の経済発展とともに世界的な知名度を持つに至っている。

一方、ご本家であるジュネーバーは英国のドライ・ジンに完全にお株を奪われ影が薄くなり、オランダ以外にはあまり愛好者はいないようだ。私はそんな中で熱烈な愛好者の一人で、ここ30年近く常時に冷凍庫に1瓶はキープしている。なぜ愛好者になったのか?疑問に思われたかもしれないが、それはオランダに勤務になってからではないのだ。

それ以前に、仕事の関係で日本に来たオランダ人が土産に持って来た茶色の陶器製の瓶に入った1本のジュネーバーに始まる。強い酒だが、なぜか美味い。ビールをチェーサーにしてショットグラスでグイっと一気に飲む。日本人はアニス臭のする酒はあまり得意ではないようだが、一旦好きになるとそれはこたえられない。世界的に有名な強い酒にはなぜかアニス臭が付いたものが多いのはなぜだろう。チャイナの白酒・ドイツのシュタインヘーガー・スウェーデンのアクアビット・ギリシャのウゾなどなど。その土産の一本でその魅力にとりつかれたのだった。だからその後オランダ勤務になりオランダ人たちと飲むようになっても、オランダ人が不思議がるほどジュネーバーを愛していたのだ。

今、日本でこの「コーレンワイン」を買える店は非常に少なく残念に思っている。外国の食料品などを扱っている店とかマニアックな酒屋になら置いてあるかもしれないが、品切れのことが多いのはなぜだろう。成城石井には一時置いてあり、何度か買ったことがあるがいつしか消えてしまった(多分、あまり売れなかったからだろう、笑)。

 

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