「赤ワインは室温で」の誤解

ワインの飲みごろ温度について、以前一度書きましたが、もう一度別の観点からみてみたいと思います。

「白ワインは冷やして、赤ワインは室温で」とよく言われます。これは、半ば正しく、半ば間違いです。

白ワインでもフレッシュで生き生きとしたタイプならタイプならキリリと冷やしたほうが心地よいし、味わい深いものならほどほどに冷やしたほうがよく、冷やし過ぎるとその良さが消えてしまいます。赤ワインでもフレッシュで軽いものなら冷やしたほうが美味しく飲めるし、特に気温の高い季節はどんな赤ワインでも少し冷やしたほうが美味しいでしょう。

「赤ワインは室温で」というのは、冷涼で乾燥したヨーロッパの気候に基づいたことで、気温が30度以上になる日本の夏では、室温のワインは美味しくはありません。

なぜ、白ワインやフレッシュな赤ワインは冷やしたほうがよいのでしょうか?それは、人間の味覚が温度に左右されやすく、口に入れるものが冷たいと甘味に対しては鈍感になり、酸味を美味しく感じるからです。反対に温度が低くない方が香は引き立ちます。

ワインを自宅で冷やす方法としてワインクーラーを用いるのがベストでしょうが、冷蔵庫で代用できます。ただし、少し時間を長めにしたほうがよく、白やロゼなら飲む3時間前に、フレッシュなタイプの赤ワインなら1時間前に入れておくのがいいでしょう。

では、具体的に何度くらいが適温なのかという話になると次のことが参考になるでしょう。欧州などワイン産地の地下セラーは年中通して温度が13-15℃、湿度70%程に保たれています。ワインを保持し、適正に熟成させるにはこの環境が理想に近いこと、ワイン造りに携わっている人たちがこの温度帯でワインの品質をチェックしていることからも、この温度帯がワインにとっての本当の常温=つまり「室温」と考えるべきかと思います。

例えば冷えていないジュース類を飲んだことのある方は経験があると思いますが、フレッシュな酸味などが薄れて甘みばかりが強調され、決しておいしくありません。赤ワインもこれと同じ状態になり、果実のもったりした甘さが目立ち、重たいだけの味になってしまいます。従って、赤ワインも飲む前に少し冷やし、「本来の常温」に近付けるのがいいのです。

総じて、年間の平均気温や季節にもよりますが、「赤ワインは室温で」というより「赤ワインは少し冷やして」という方が正解といえるかもしれません。

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