ワインに浸るきっかけは「家」

さらに、私がワインの世界に少しずつ入り始めたのは、オランダ駐在の後半の3年を過ごした「家」のせいでもあった。その家というのはロッテルダムの中心、しかし近くに森と湖があるクラーリンゲンという閑静な住宅地の一角にあり、ロッテルダムマラソンのコースにも非常に近い。家は3階建て地下1階の100年以上前に建てられた家で、当時は会社の持ち物だったが、私が建物の管理人兼住人として住むことになった。

口悪い友人のオランダ人は「クラーリンゲンのお化け屋敷」というが、その家には、何と地下に3畳ほどの広さのワインセラーがある。そして、そこには驚く勿れ日本製のエアコンが付いているのだ。居住する他の部屋にはエアコンなどないのに、である。オランダは真夏でもそれほど暑い日は多くないので、部屋にエアコンなしでも十分過ごせる。その意味でこのワインセラーは以前住んでいた人が如何にワインに入れ込んでいたかがよく分かる。

注)この写真で白い手摺があるのは張り出したテラスで、ワインセラーはまさにこの下の地下の部分に作られている。

ある時、以前の住人宛に一通の手紙が来た。見るとワインを専門に扱っている問屋からのもの。要は、顧客への売り込みである。それまではワインは近所の酒屋とか事務所の下の酒屋で買っていたが、物は試し、一度その問屋とやらに見学に行ってみようと思い出かけた。

その問屋の広い倉庫にはたくさんの商品、前庭では既に大勢の人がいくつもあるテーブルを囲み皆グラスを持ってワイワイやっている。試飲会である。私が行くと手招きをする。当然酒屋の人たちが大半だと思うが、個人の客にも販売するので私のような場違いの者も歓迎してくれた。日本人は我々夫婦以外誰もいなかった。そこでいろいろ試し、いきなり10本以上買ってしまった。勢いとは恐ろしい。しこたま試飲もしていい気分になり、また運転して帰った。これを契機にそれ以降、帰国するまで何度か訪ねることになった。

 

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